美唄の田んぼのこと


開店以来、お店でお出しすることが多い

美唄のお米のことを今回綴ります。

11月から夏頃までお出ししているので

きっと召し上がっていただいている方も多いと思います。

先日の定食もこちらの美唄のお米(ゆめぴりか)です。




こちらはInstagramの動画メディアで

店主が連載をしていることがきっかけで

書くことにしようと決めたものです。


本日Instagramにて動画とともに公開されました。

Instagramでは文字に限りがあるため

書ききれない部分もありましたので

ホームページにて全文を残すことにしました。


素敵な音楽とともに動画にしていただきましたので

こちらの動画とともにお愉しみいただけますとうれしいです。

この話を書く きっかけをいただいた

orcaのお二人に感謝いたします。







わたしはお店近くにある山の麓に田んぼを借りてお米を作っているのですが

もうひとつ、美唄のある場所で田んぼの契約をしています。

先日、家族で田植えをしてきました。




札幌から車で約1時間、石狩川のそばにある宮島沼。

ラムサール条約に指定されている湿地です。

わたしが契約しているのは、この沼のそばにあり「田んぼのさまざまな生き物を守り育みながら、お米もおいしくいただこう」という宮島沼プロジェクトのひとつ『ふゆみずたんぼ』。お米づくりの体験ができ、収穫したお米はみんなで分けていただきます。


 

時勢柄、以前のように出来ないこともありますが、鳥や虫のにぎやかな声のなか裸足でどろんこになって、たくさんの人と田んぼ仕事を共にすることは、言葉を多くかわさなくても、心も体もとっても気持ちがいいものです。

 


宮島沼を知ったのは、すきな作家(梨木香歩さん)が書いた渡り鳥についての本を読んだことがきっかけでした。札幌近郊でも水辺に飛来する鳥たちを観察することができるのを知り、数年前の春に訪れました。夜明け前の少し明るくなってきた空に、声をあげながら群れで飛ぶマガンたち。しばらく立ちすくみ、ただ空を眺めていました。





マガンは主に冬は東北周辺で過ごし、夏はロシアの極東地域で繁殖する渡り鳥です。

北海道は春と秋に渡りの途中で羽を休めるための場所になっていて、宮島沼には何万羽ものマガンたちがやってきます。渡ってくる鳥たちは、田んぼに残された落ちもみ(お米)を食べて長い渡りに備えます。




宮島沼は、マガンや白鳥などの水鳥の重要な生息地として

2002年にラムサール条約に登録されました。


ラムサール条約は、1971年イランのラムサールで採択された湿地に関する条約で

正式名称「特に水鳥の生息地として国際的に重要な湿地に関する条約」。


生物多様性に富んだ湿地の環境を守り、湿地の恵みを上手に活用していくことを目的としています。よく知られている場所だと釧路湿原もラムサール条約に指定されています。


北海道の湿地

道内のラムサール条約湿地


↑それぞれリンク先で見ることができます



湿地は、水鳥だけでなく魚や虫や草花がとても豊かな場所です。




今は様変わりしてしまいましたが北海道の開拓がすすむ前、北海道の石狩平野には広大な湿地がありました。札幌も昔は水のまちでした。当時の宮島沼もとても大きく、豊かな湧き水は飲料水にできるほどきれいだったそうです。



現在は水質が悪化し、元々あった水草の種類が変わり水面を覆うようにヨシやマコモなどの抽水植物が増えてしまい、周囲の土地の乾燥化もすすみ水面が急速に減少してしまいました。この原因はいくつかあげられますが、周辺の田んぼの乾田化や畑地化、土砂や栄養分の流入もそのひとつと考えられています。



『ふゆみずたんぼ』は冬季に灌水をすることで、イトミミズやミジンコなどたくさんの生きものの働きが活発になり、薬や化学肥料を使わずにお米をつくることができ、湿地に棲む生き物だけでなく人や環境への負担も少なくなる農法です。北海道は積雪などで水を張れませんが、厚く積もった雪の下では水は凍りません。こちらのふゆみずたんぼでは、融雪剤を使用せず自然に解けるのを待って農作業をおこなっています。




沼の周辺をふゆみずたんぼにすれば

沼の乾燥化を阻止し水もきれいにする効果があると予想されています。



きれいな沼があり

人が営む田んぼがあれば

この先も鳥たちをはじめとする

すべての生きものたちが

安心して過ごすことができます。

そんな未来をつよく望みます。
今年も無事にお米が実り、鳥たちが渡ってきてくれますように。







宮島沼ふゆみずたんぼプロジェクトについて


こちらは宮島沼の保全を主に

さまざまな活動をしている

事務局の牛山さんと加藤さんを筆頭に

ふゆみずたんぼの農家さん、ボランティアの方など地域と連携しながら活動している

素晴らしいプロジェクトです。



私は2018年より支援の気持ちも込めて契約しています。

田んぼのオーナー制度には限りがありますが

宮島沼を中心にさまざまな取り組みや支援の仕方があります。

ご興味のある方、支援したい方はぜひご覧ください。



宮島沼プロジェクト

自然、農業、人の調和を目指し、宮島沼とその周辺で活動する、地域の農家さんを主体とする団体によるプロジェクト


MIYATOMO~宮島沼・水鳥・地域の応援団~

宮島沼の自然と地域を応援する仲間、宮島沼水鳥・湿地センター(美唄市)、市民団体「宮島沼の会」、子どもたちのグループ「自然戦隊マガレンジャー」、地域の農家さんを主体とする「宮島沼プロジェクトチーム」などのサイト。


美唄市HP

宮島沼についての記事がいくつかあります(サイト内検索を推奨します)




最後にうれしい偶然のお話があります


初めてこのプロジェクトに申し込んだ際、メールの返信をくれた方(加藤さん)がなんだか知っている人と同じお名前だなと思っていたのですが、実際にお会いしたらまさにその方でした!


加藤さんとは、もう10年以上前、この土地に自生する動植物のことをもっと知りたくて、札幌にある森のガイドにボランティアに参加した時に出会い、お世話になった方です。私は時々しか参加出来ませんでしたが、加藤さんはいつも優しく生き物のことをたのしく共有してくださいました。
今まで知らなかった生き物や植物をすこし知ることができ、他に関わっている方々も面白く、森に来てくれた方々との交流も含め、学びながらもとてもたのしい時間でした。

今のわたしに繋がる大切な経験となっています。




渡り鳥とお米を通して、再び繋がったご縁に感謝です。


この文章を作るにあたって、その加藤さんにご協力いただきました。

加藤裕子さん、ありがとうございます。



まだまだ田んぼを始めたばかりで

農家さんの手を借りなければ出来ていませんが

これからも大好きなお米づくりに関わっていたいなと思います。



大人になってから

こうして田んぼを借りたり、はじめることになったのかというと

とても印象に残るきっかけ があって

このことはきっとまた何かの時に綴ることになる気がします。




長い文を読んでくださって

ありがとうございました。



よおし、今日もこれから炊き立ての
ご飯を塩むすびにして食べようと思います。






0コメント

  • 1000 / 1000